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おうちで旅する北海道[道民の味噌 編]

The story of DOMIN NO MISO

日本の食卓に欠かせない食品の一つ、味噌。
多くの家庭で“いつもの味”があるものですが、2016年の発売以来、道内でじわじわと人気を集めている味噌があります。手がけるのは創業1891年の老舗醸造蔵元。一体どんな味噌なのか取材してきました。

北海道の原料で、北海道の食に合う味噌を、
北海道で暮らす人のために

訪れたのは、札幌市東区にある福山醸造株式会社。道民なら誰もが目にしたことのある「トモエの味噌」を製造しています。すでに北海道を代表する商品を有しながら、同社が新たに売り出したのが、その名もズバリ「道民の味噌」。

発売当初からインパクト抜群の商品名と、これまでの味噌ではあまり見かけなかったスタイリッシュなパッケージデザインが注目を集めていました。実はこれに先駆けて「道民の醤油」が発売されており、道民シリーズとして展開されています。

「北海道のメーカーとして、北海道の原料で北海道の食に合う調味料を作りたいと、道民シリーズを立ち上げました」
そう話すのは、営業サポート部門で広報を務める猪股美晴さんです。

システム課、通販課、広報を兼任する猪股美晴さん

「道民の皆様に好まれている白こしタイプで、甘みを感じる高い麹割合を目指しました。道産の米と大豆を大雪山の伏流水で仕込み、酒精や調味料を使わずに仕上げた無添加味噌というのも大きな特長です」

北海道では白こしタイプとだし入りタイプの味噌が主流だそうですが、原料の産地にこだわる消費者の増加や生みそ(非加熱)のニーズが高まる中、意外にも白こしタイプでそれらに応えられる商品は市場に出ていなかったといいます。同社はそこに着目し、試行錯誤を重ねたのち2016年に「道民の味噌」を発売。毎年着実に売り上げを伸ばし、今や「この味噌を食べたら他の味噌はもう食べられない」といった声が届くほどの人気商品となりました。

シンプルながら漢字の力強さと金色の文字が目を引く

 

素材の特性を見極め、見守りながら作る

同社の味噌製品はすべて、旭川市にある味噌蔵で作られています。もともと味噌は雑菌が繁殖しにくい厳寒期に仕込むのがよいとされ、一方で熟成期には高い気温になることが望ましく、そういった意味では盆地で寒暖差の激しい旭川が適しています。また、大雪山の良質な伏流水を仕込み水として使用できることも、旭川が選ばれた大きな理由としてありました。

とはいえ、いい条件が揃っているからといって簡単にはいかないのが味噌づくり。「道民の味噌」は大豆、米ともに北海道産を使用していますが、具体的な産地は季節によってさまざま。その時々で温度管理や水の浸し方、菌の育成の仕方は異なります。タンクごとでも調整の度合いが微妙に変わるため、職人さん曰く「お酒と違って”今年の出来はこれです”と言えるものではないので、品質や味を安定させるのが非常に難しいです。これが完成というゴールはない。日々挑戦です」

一晩水に浸した大豆を煮てすりつぶす、最も過酷な作業(提供写真)

豆、麹、塩を均一に混ぜる(提供写真)

こうして丹精込めて作られる味噌が多くの人から支持されることに納得しつつも、各家庭で“いつもの味”があるものを乗り換えてもらうのは容易ではないはず。ではどのように「道民の味噌」を認知させていったのでしょうか。

 

作り手とお客様、生の声が交わる直売所

「メディアで告知をするといった発信はもちろん、大切なのは味を認めてもらうことなので、スーパーのマネキン販売で地道に紹介してきました」と猪股さん。
さらに本社に併設している直売所「トモエ醤油味噌本店」の存在も大きいと話します。

「今使っている味噌より味わいがやわらかいものを求めていたり、他の料理にも使いやすい味噌が知りたいなど、味噌に関するさまざまなお悩みやご要望にふれられる貴重な場となっています」

直売所では道内でもめずらしい、生味噌と醤油の量り売りを行っています。「道民の味噌」は量り売りの対象ではないものの、お客様の生の声を聞く中で商品をおすすめできる機会も数多くあったといいます。

直売所のカウンター。力強い「醤油」「味噌」の表記に同社の自信がうかがえる(提供写真)

直売所がオープンしたのは2014年。同社では以前から工場見学を通して醤油や味噌の製造工程、食べ方、保存方法などを伝えてきましたが、より多くの方に日本古来の食文化に興味を持ってほしい、自社製品の魅力を知ってほしいとの思いから設置したといいます。
「量り売りはメーカーだからこそできる取り組み。いろいろな味を試して自分好みを見つけてもらえたらうれしいです」

蓋を開けると味噌がぎっしり。100gから注文可能で、期間限定品を含めて常時5種類を用意している

直売所限定の大人気商品「鮭香るしょうゆ」。卵かけご飯に使うと味の違いに驚愕する

 

回船問屋から醤油製造業者へ

同社の前身は福井県を拠点とする回船問屋でした。日本全国を巡っていた頃、北海道の山の幸や海の幸など豊富な食に魅了され、大豆の産地でもあったことから、1891年にヤマト福山商店として醤油製造業を開業しました。当時の看板は本社内の資料室に飾られています。

看板のほかにも船箪笥や当時の書籍など、福山家の蔵に眠っていた貴重な品々が並ぶ

味噌の製造に着手したのは1912年。その6年後に現在地である苗穂町に工場が設立されました。当時の苗穂地区は玉ねぎ栽培が盛んだったため広大な土地があり、JR苗穂駅が近いことによる快適な物流、良質な石狩川水系の伏流水など、醤油・味噌の製造には最適な環境でした。
1970年代、製造量の拡大により味噌の製造を旭川で、醤油の製造を札幌で分けることとなり現在に至ります。醤油蔵は2004年に北海道遺産、2007年に近代化産業遺産に認定され、まさに北海道に根付くメーカーとして名をはせています。

130年もの歴史を刻むレンガ造りの醤油蔵(提供写真)

 

味噌本来の風味を感じてほしいから

最後に、「道民の味噌」を使った味噌汁に合う具材を猪股さんに尋ねたところ、「味噌本来の風味を感じられるように、野菜や魚などあっさりした食材を合わせてみてください」とのこと。

具体的には
・ニラと卵
・かぶ(葉も使う)
・白菜と油揚げ
・じゃがいもとにんじん
・魚のつみれ
・キャベツとベーコン
とたくさん教えてくれました。

さっそく作ってみた具だくさん味噌汁。旨味たっぷりの一杯はこれだけで十分なおかず

なお、「味噌汁以外の使い道がわからない」というお客様も多いことから、同社ではレシピサイトのクックパッドにて「道民の味噌」を使ったレシピを投稿しています。こちらもぜひ参考にしたいですね。

Gear8

WRITER

Gear8
ウェブディレクションチームとして札幌を中心に活動している会社で、2019年秋に10周年を迎えました。 お客様のウェブサイトリニューアルに関わる企画・設計、デザイン、マークアップ、プログラミング、運用支援を含めてワンストップでサポートしています。 その中でクライアントが伝えるべきことの本質を引き出し、伝えたい人たちに一番伝わる方法で表現することにこだわっています。