クラフトビールとは小規模な醸造所で職人の手によって造られるビールのことで、元々は“地ビール”と呼ばれていたものが、手工芸品(クラフト)になぞらえて呼び名を変えたといわれています。
今回は、北海道のクラフトビールが味わえる札幌市内の4店をハシゴしました。
その日できた分だけ、一期一会の味わいを
街中のブルーパブ「月と太陽BREWING」
最初に訪れたのは、二条市場の近くに位置する「月と太陽BREWING」。2014年秋のオープン以降、道内外問わず多くのビール好きの目に留まり、予約が取りづらいほどの人気店に。けれど代表の森谷祐至さんはいたって謙虚に「ビールも料理も良質な素材あってこそ。そこに付加価値をつけて提供しているだけです」と話します。
森谷さんは飲食店に約10年間勤め、2013年末に独立。オリジナリティを追求した店作りを考える中で“飲み物まで手作りしたい”との思いから、自身が好きだったビールの醸造に興味を持ったといいます。当時、札幌もとい道内でなじみの薄かった“ブルーパブ(ビール醸造所を併設する酒場)”という形態で展開することを決意。道内各地のビール工場へ出向き、飛び込みで醸造に携わって経験を積んだといいます。
同店では“本日のクラフトビール”として日替わりの10タップを用意し、自家醸造のビールはその日できた分だけを提供。森谷さん曰く「基本的に同じビールは作らないようにしている」ので、まさに一期一会の味ばかりです。
フードメニューはおつまみからメインまで、ついついビールが進むものばかり。「道産じゃがいものフライドポテト〜自家製オーロラソースで〜」は、素材のおいしさをストレートに表現した一皿。じゃがいもを丸ごとボイルしてから手で裂いて揚げることで、ホクホクとした食感をより良くしているといいます。
いつ訪れても“ビールの新発見”と出会える「月と太陽BREWING」。ここからクラフトビールにハマる人が増えていくことでしょう
TEL 011-218-5311
札幌市営地下鉄 大通駅(35番出口)より徒歩約3分
営業時間 月〜土17:30〜24:00、日17:30〜23:00(L.O.22:30)※7月〜9月のみ15:00から営業
定休日 不定休
江別の工場から出来たてのビールを直送
「Beer Bar NORTH ISLAND」
次に訪れたのは、札幌の隣町・江別市にて醸造を行うSOCブルーイング株式会社の直営店「Beer Bar NORTH ISLAND」。関東を中心に全国各地でも飲まれている「NORTH ISLAND BEER」を全種類、いつでも出来たての状態で味わうことができます。10階建てビルの最上階とあって、市内のビアバー随一の景色とムードあふれる空間が自慢。“レンガの街”と呼ばれる江別市をイメージした内装から地元愛が感じられます。
“Beer is Art”をコンセプトにカナダで修行を積んだ醸造家たちによって造られるビールは、北海道のブルワリーではあまり見かけない、ホップをふんだんに利かせた北米スタイルのビールです。中でもI.P.Aが人気で、柑橘を思わせるホップの香りが心地よく鼻を抜け、ガツンと来る苦味が喉をかけ抜けます。「うちのI.P.Aは苦味が強め。他のI.P.Aだと物足りなくなる、と話すお客様がたくさんいらっしゃいます」と店長兼料理長の土橋謙太さん。夏は特にオーダーされるというヴァイツェンは江別産小麦・ハルユタカを使用しており、ほのかな酸味と甘みが広がります。
もう一つの魅力は、食堂というだけあってフードメニューが豊富なこと。肉刺しや肉寿司といった肉料理が中心で、中でも肉刺しは1テーブルにつき必ず1回は注文されるほどの人気メニュー。肉の産地や部位、タレなどさまざまな味を用意しており、3種または5種の盛り合わせもあるので数人のグループでも十分に楽しめます。
他にも「完熟トマトの天火焼き」は、ここでしか味わえない必食の一品。丸ごとオーブンで焼いたトマトとみたらしのたれ、生クリームを混ぜ合わせてバゲットにつけるのですが、これが何ともクセになる味。思わずバゲットを追加注文する人も多いといいます。
明るい店員さんが多く、アットホームな雰囲気ただよう「クラフトビア食堂 VOLTA」。「ひとりでいらっしゃるお客様も多いです。従業員とおしゃべりしたり、じっくりビールを味わったり、過ごし方は自由です」と後藤店長が話すように、どなたでも気兼ねなくクラフトビールを堪能できる一軒です。
TEL 011-212-1585
札幌市営地下鉄南北線 すすきの駅から徒歩約3分
営業時間
月~金、祝前日17:00~翌3:00 (料理L.O. 翌2:00 ドリンクL.O. 翌2:30)
土15:00~翌3:00 (料理L.O. 翌2:00 ドリンクL.O. 翌2:30)
日、祝日15:00~翌0:00 (料理L.O. 23:00 ドリンクL.O. 23:30)
定休日 12月31日、1月1日
“はじめまして”でも会話が弾む
「ビアバー・ひらら」
最後は狸小路5丁目の三条美松ビル3階に店を構える「ビアバー・ひらら」。南区にある澄川麦酒醸造所にてビールを醸造し、そこに併設する「ビアパブ・ひらら」の姉妹店として2019年春にオープンしたばかりです。
代表を務める齋藤泰洋さんは元々、ドイツビールを中心に提供する「ばぁる・ひらら」を営業しており、当時のポリシーとして「仕入れの際は必ず醸造先を見学し、醸造家と会っていました。そうすることで、お客様へビールの情報を伝える熱量が変わります」と話します。自身も醸造に興味があったものの設備投資の面で諦めていたという齋藤さん。ところがあるとき、島根県の小さな醸造所を見学したことで「設備を工夫すれば自分も挑戦できる」と確信。“自分が飲みたいビールを造る”をモットーに、醸造免許を取得してから今に至るまで150種類以上のビールを造り続けてきたといいます。
そんな齋藤さんに同店を任されているのが、店長であり調理も担当する佐竹幸穂さん。「ビアパブ・ひらら」にお客さんとして通う内、料理やお菓子作りが趣味だったことが高じて店を手伝うことに。ビール好きとあって佐竹さんが作る料理はどれもがビールとの相性抜群で、自家醸造ビールを衣に使用したフリットやビールで煮込んだ手羽先など“ビール料理”も名物です。
ビールと料理はもちろんですが、店の魅力は佐竹さん曰く「従業員とお客様、またはお客様同士の距離がとても近いことです」。ビール片手に周りの方々とすぐに打ち解けられる空気感が心地よく、長居する人も少なくないとか。楽しくもあたたかい気持ちにさせてくれる「ビアバー・ひらら」は、旅の締めくくりにおすすめです。ちなみに「ビアパブ・ひらら」は新千歳空港からバス1本で行けるので、気になる方はぜひ南区澄川へも。
TEL 011-211-6676
札幌市営地下鉄南北線 すすきの駅から徒歩約3分
営業時間 火~金 17:30~23:00(L.O.22:30)、土日祝 12:00~19:00(L.O.18:30)
定休日 毎週月曜日(その他イベント対応などで月に数回の不定休あり)