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北の廃線跡地をたどる旅[津別町編]

Abandoned line in Tsubetsu

かつて鉄道が走っていた場所へ出向き、その土地の歴史や文化、食にふれる旅の第3弾。
今回は大正時代に開業した旧国鉄相生線の北見相生駅の駅舎を再生した公園を訪ねようと、全道屈指の広汎な町域を有する津別町に足を運びました。

再塗装や再活用によって
よみがえった列車と駅舎

女満別空港から車を走らせること約1時間。到着したのは国道240号線沿いに位置する「相生鉄道公園」。昭和60(1985)年4月に廃止となった旧国鉄相生線北見相生駅の駅舎やホーム、当時活躍した車両などが保存されている公園です。

旧国鉄相生線は大正14(1925)年に美幌〜北見相生間が開通し、年間30万人以上の乗客が利用するほど町の動脈として大きな役割を果たした鉄道でした。津別町は町の総面積の86%を森林が占めており、林業に関連する産業によって発展してきた町であることから、最盛期には林産品や農作物などを満載した貨車が何十台も連なるほどだったといいます。相生鉄道公園はそんな当時の景観を多く残す全国的にも貴重なメモリアルパークとして、津別町が相生振興公社に委託して保存・整備を続けています。
(引用元:相生鉄道公園内に設置されている案内看板)

(左)美幌〜北見相生間にあった開拓駅の駅名標/(右)当時の北見相生駅で使用されていた発着時刻表

最初に目を引くのは、クリーム色と朱色のツートンカラーがかわいらしい「キハ22 69」。キハ22形は1950年代後半に登場した一般型気動車・キハ20形の極寒地向けの車両で、窓の構造や配置、デッキ付きなどが特長です。北海道だけでなく東北地方でも活躍していたようです。

これまで数回にわたって塗装工事が行われており、ふるさと納税型クラウドファンディングの寄付金が使用されたことも

中に入ることはできませんが、再塗装された美しい車両は今にも走り出しそうでワクワクします。

その隣にあるのは鮮やかな青色の「スハフ 42 502」。無料で宿泊できるライダーハウスとなっており、全国から鉄道を愛するライダーが集まるとのこと。ローカル旅ならではの面白い出会いがありそうです。

見学者の入車は厳禁。新型コロナウィルス感染症対策のため令和2年5月1日~当面の間、閉鎖している

旧駅舎側へ進むと、貨車と車掌車、広幅雪搔車が並んでいます。

広幅雪搔車は迫力満点!相生鉄道公園に保存されているのは「キ 703」

雪搔車は冬季に線路の除雪を行う事業用車ですが、そのなかでも広幅雪搔車は線路だけでなく停車場や操車場などの除雪にも用いられていました。前面にある左右に開いた翼で広い範囲を除雪することができます。

ニカッと笑っている顔のようにも見える

旧駅舎は現在「駅舎cafe ホロカ」として活用されており、町内焙煎のオリジナルコーヒーや自家製ジュースのほか軽食やスイーツも楽しめます。

メニューに「モンゴル水ぎょうざ」という見慣れない一品を発見。店主に尋ねたところ、ご主人がモンゴル人なのでモンゴルの家庭料理を提供しているとのこと。ふるさと納税の返礼品にもなっている

訪ねたのがお昼時だったこともあり、地名がついた「相生山菜うどん(500円)」を注文。地元の豆腐屋さんの大きな油揚げと地場産のわらびやきのこがたっぷり乗った、ワンコインとは思えないほど具沢山なうどんが出てきました。景色を眺めながら、風の音を聴きながら、うどんをずずずっと。だしがよくきいていて、山菜の食感と風味をしっかり感じられる一品でした。

とても静かな空間でひと息つくには最適

カフェの先客だった地元のおばあさんが、店主よりも先に「お客さん来たよ〜」と取材班を迎え入れてくれたのも、なんだか心が和む瞬間でした。

 

ぷっくりもっちり“クマヤキ”が人気

相生鉄道公園に観光客が足を運びやすいのは「道の駅あいおい」の構内にあるから。駐車場から相生鉄道公園へと続く道があり、車両もすぐに見えるので休憩がてら立ち寄ることができます。

道の駅あいおいには道産そば粉を使った手打ちそばが味わえる飲食コーナーや、地元農産物を販売する売店などがありますが、特に人気を集めているのは「相生名物 元祖クマヤキ」。ぷっくりとした特徴的なフォルムがかわいらしいクマの形をしたたい焼き風スイーツです。もっちりとした食感の生地には道産小麦と、水の代わりに道の駅あいおいの手作り豆腐からできる豆乳を使っているため、まろやかな風味に仕上がっています。

味は全部で4種類。津別・津別近郊産の小豆で作る自家製つぶあんが入った「クマヤキ」、自家製つぶあんと生クリームを組み合わせた「ナマクマ」、豆乳クリームを詰め込んだ「ヒグマ」、タピオカ粉で作った真っ白な生地が特徴の「シロクマ」が常時販売されており、季節限定のフレーバーが登場することも。手土産として購入する方も多いといいます。

クマヤキのデザインは津別町出身のイラストレーター・造形作家である大西重成さんが手掛けています。構内の至る所にクマヤキが描かれているので、食べて、見て、写真を撮って、クマヤキを存分に楽しむことができます。

クマヤキ仕様の自動販売機の近くには、からだをかじられたクマヤキのパネルがあるのでぜひ記念撮影を!

クマヤキを配達してくれる「クマヤキ号」。移動時間1時間以内の距離で、50個以上お買い上げのお客様が対象

よりお土産に適した「クマヤキサブレ」は女満別空港内のコンビニでも購入可能

 

奇跡の出会いを求めて、早朝の津別峠へ

津別町の旅の締めくくりにと参加したのは「屈斜路湖雲海ガイドツアーin津別峠」。津別町に隣接する弟子屈町にある屈斜路湖は国内最大のカルデラ湖で、6月〜10月の早朝に雲海を見ることができます。絶景ポイントはいくつかありますが、津別峠は360度パノラマビューで堪能できるとあって興味が湧きました。

出発は午前4時30分。辺りはまだ真っ暗で、どんな道を走っているかもよくわからないまま送迎バスに揺られること約30分。目の前に現れたのは、中世ヨーロッパの古城を思わせる津別峠展望施設。屈斜路カルデラの外輪山にある展望施設の中で最も高い標高947mに位置し、オホーツク海や大雪山の山々が一望できます。

自家用車で訪れる人も数組いるなかツアー参加者は展望室へ。通常、展望室の開館時間は午前9時ですが、ツアー参加者のみ特別に入場することができます。素晴らしい景色が広がって…はいるのですが、気温は6.6℃、とにかく風が強くて体感気温は2、3℃下がっているように感じます。

「暖かい服装でご参加ください」と言われていましたが予想以上の寒さ

徐々に日の光が屈斜路湖を照らしていき、厚い雲が姿を現し始めました。

雄阿寒岳にも雲がかかる。雲海への期待が高まる

オホーツク海に流れ込む湧水で淹れたというコーヒーをいただきながら期待して待つも……今回は残念ながら気象条件が揃わず、屈斜路湖一面に広がる雲海を観ることは叶いませんでした。

朝の澄んだ空気と冷たい風、雲海は見えずともダイナミックで美しい景色によって最高の目覚めとなりました。
ちなみに取材班がツアーに参加したのは9月でしたが、7月の雲海発生率は94%を記録したそうです。次に参加するなら7月が狙い目かもしれません。


津別町で過ごしたひとときを一言で表すと“これぞローカル旅”。一つのスポットから次のスポットまでの長い移動時間、混雑という言葉が当てはまらないゆったりと落ち着ける名所、どこか懐かしくあたたかみのある名物…そのどれもが自由で、贅沢で、ローカルの“いいとこどり”をした気分。こういう刺激もあるんだと感じた旅でした。

Gear8

WRITER

Gear8
ウェブディレクションチームとして札幌を中心に活動している会社で、2019年秋に10周年を迎えました。 お客様のウェブサイトリニューアルに関わる企画・設計、デザイン、マークアップ、プログラミング、運用支援を含めてワンストップでサポートしています。 その中でクライアントが伝えるべきことの本質を引き出し、伝えたい人たちに一番伝わる方法で表現することにこだわっています。