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クリエイティブを宿す森の旅

Trip into the creative forest

この次旅に出るなら、どこで何をしたいですか?
今回訪れたのは、長野県小諸市にある「ゲストハウス&茶房 読書の森」。
世界中の旅人を迎え入れてきたオーナーの依田さん夫妻が、into the localにぴったりの旅のお話を聞かせてくれました。

静けさと創造の森へ

「ゲストハウス&茶房 読書の森」は、長野県東部、浅間山に見守られた御牧ヶ原(みまきがはら)と呼ばれる美しい台地の上に建っています。

地元小諸市出身の依田雄さん・恵さん夫妻が、“この美しい風光と共感しあう、言葉を大切にする場所と時間を作りたい”という願いから、1993年にオープン。
文学やアート系の本に囲まれた喫茶室をはじめ、コンサート会場やギャラリーにもなる多目的ルーム、野原には藁と土で作った小屋、モンゴルの“ゲル”など個性的な施設が点在しています。

「飲食店がメインの稼ぎだったことは一度もないんですよ」と、柔らかい口調で語る雄さんのペンネームは“すろうりぃ”。

“すろうりぃ”こと依田雄さん

開業当時、信州ではブックカフェの概念もまだ珍しい時代。雄さんは家計を支えるため、学習塾を開き、夜は講師として働いていたことも。「もともと、喫茶を創造的な時間と場所として提供するという強い想いで始めたので、お客をどんどん回すとか、消費的なものであってはいけないと思っていました。だから塾の方も、副業ではなくて、全部本業という気持ちでやってましたね」

雄さんが開業記念に出版した絵本『見よ、森に静けさがある』は、のちに英訳もされた

一方で、長年放置されていた雑木林の手入れをし、エノキの葉を食草とする国蝶オオムラサキを呼び戻すなど、森の整備にも情熱を注いだ雄さん。
染色作家である恵さんは、畑を耕し、新鮮な野菜料理でお客さんをもてなす努力を重ねてきました。

さまざまな野菜が実る“恵ファーム”

そんな依田さん夫妻のライフスタイルと読書の森は、自然やアートを愛する人々の共感を呼び、徐々に地域に根付いていきました。

「どうらくオルガン」がつないだ縁

読書の森が“アートフィールド”として多くの人に認知されるようになったきっかけは、ある楽器でした。
それは、絵本作家田島征三さんと音楽家松本雅隆さんが2012年の越後妻有トリエンナーレ「大地の芸術祭」に出展した作品「どうらくオルガン」です。

木と竹で作られた「どうらくオルガン」。中央の送風機をはじめ、さまざまな仕掛けを使って音が奏でられる

以前から、松本雅隆さんが率いる「ロバの音楽座」のワークショップが毎年読書の森で行われていた縁もあり、芸術祭の会期が終了すると、オルガンの移設先にいち早く名乗り出た雄さん。2013年に大勢の人の協力を得て、新潟県十日町からの移設を実現。
その奇想天外な楽器は人々を引きつけ、近年は国内外のアーティストも多く訪れるようになっています。

田島征三さんの壁画が描かれた「征三ハウス」には4人まで宿泊可能

海外からのゲストが教えてくれたこと

アートや自然を愛する人たちの拠り所として、ゲストハウスの運営にも力を入れ始めた依田さん夫妻。コロナウイルスの影響が出る以前は、読書の森のゲストの大半は外国人だったといいます。

「外国人を受け入れるに当たって、地域の人たちの反応はどうかなと思ってたんだけど、全然心配なかったですね。おじちゃんおばちゃんたちは、外国人のお客さんが道を歩いていると、日本語でどんどん話しかけて野菜をくれたり、ジェスチャーでいいコミュニケーションが取れていて、いなかの人の温かさとか、ローカルの魅力が伝わっていると思います」

ゲストの出身地にシールを貼ってもらっているという地図帳

ゲストハウスを運営する依田さん夫妻の楽しみは、ゲストと食事をともにする時間だといいます。自家栽培の野菜を使ったヘルシーでボリューム満点の恵さんの料理は、ベジタリアンも含め、外国人客にも大好評(コロナウイルス対策のため、現在、ゲストハウス利用者の食事は1回1組限定)。

取材時にも、畑の野菜で手早く親子丼を用意してくれた

「一緒にご飯を食べると、言葉が喋れないなりにもコミュニケーションが取れるし、外国の話もいろいろ聞けて楽しいですね。お客さんも東京で泊まったときには、誰とも話をしなかったからと喜んでもらったり」と恵さん。

さらに、6年前からは留学生や外国人のツーリストに日本のお盆を楽しんでもらおうと“インターナショナル盆踊りフェスタ&イマ市”を企画。雄さんが作詞した「どうらく音頭」の生演奏に合わせて国内外のツーリストが交流する一夜は、今や読書の森の夏の風物詩になっています。

国籍を問わず多くのゲストが踊り興じる“インターナショナル盆踊り”(提供写真)

コロナの影響で今年は開催できなかったものの、“これからもこのお祭りを通して国際交流を続けていきたい”と願う依田さん夫妻。

お二人のチャーミングな笑顔の奥に宿るクリエイティブ魂が、この森の創造力の源だと感じました。

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地域の人と出会い、そこに流れる時間を楽しみ、なにかを創造する“into the local”な旅へ。
次はあなたも出かけてみてはいかがでしょう。

andcraft, Inc.

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