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瀬戸内海に停泊する「L’art de vie号」での旅

L’art de vie HOTEL

人は何を求めて旅をするのでしょうか。

家族との思い出づくりや、恋人との記念日、時には日常に疲れてしまったから…なんてことも。いずれにしても、日常からちょっと離れて、「何か」との出逢いに期待して旅に出ることが多いのではないでしょうか。

今回ご紹介するのは、アートと地域と、そして人と出逢えるホテル「L’art de vie (ラドビ)HOTEL(PRIVATE VILLA & RESORT)」です。

レストランからホテルへ新たな旅路

県道347号線から、「ほりえ海の駅うみてらす」方面へ。旧堀江港には県外からのヨットや船舶が停泊することもあり、港町としての営みが今も残っています。閑静な住宅街を進むと突如現れる白い2階建ての建物。ここ2階が「L’art de vie」です。

2018年、本社をここ堀江に移転した際に2階に船をイメージしたオーシャンフロントのレストランカフェをスタートさせました。
波音を楽しみながら瀬戸内海を一望できるロケーションとこだわりの料理、そしてまさに船で様々な国を巡るように期間限定で各国の料理を振る舞うというユニークな発想にリピーターが後を絶ちませんでした。ファンに惜しまれながらもレストランとしての幕を下ろしたL’art de vieが2023年4月、レストランだったフロアを丸ごと貸し切れる1日1組限定オールインクルーシブ型ホテルに生まれ変わりました。

階段を上り出迎える重厚な青いドアの向こうには、ホテルオーナーである「キャプテン」のこだわりがギュッと詰め込まれたワンフロア1室の客室がありました。


「ご乗船ありがとうございます」笑顔で出迎えてくれたのはL’art de vieクルーの岡田さおりさん。第一声からこれから船旅に出るのだ!ということを彷彿とさせてくれます。

まさにL’art de vieもホテルという業態へ変化という船出をしたばかり。そしてさおりさんも、同じくホテルがスタートする4月にジョインしたばかりの新人クルー。「少し前には、ここで働く未来がくるなんて想像していなかったです」何が彼女を旅へ出ることを後押ししたのか、それはまた後述で…。

さあ、私たちを乗せた「L’art de vie号」でどのような出逢いが待っているでしょうか。

 

アートと出逢う

船内に足を踏み入れたらまず、ぐるりと見渡したくなる仕掛けがたくさんあります。

天井に浮かぶアンティークのシーカヤックの骨組み。

金貨を見立てたチョコレートのおもてなしや、色とりどりの食器や骨董品が並ぶ壁一面の本棚。

カラフルな壁の向こうに船の乗組員が寝るベッドをイメージしているという2段ベッド。置かれている家具はフランスやイギリスを中心としたアンティーク物。

「船内はもちろんですが、この自然もアートの一部ですよね」テラスへ出る大きな窓はまるで額縁のように、海と空、そして島々を収めています。

棚はまだ未完成。今もコツコツ集めています。


フランス語で”L’art”はアート、”vie”は生活や命、人生という意味で、直訳すると「生活はアート」。普段の生活、人生にアートを取り入れるという意味を持たせた造語からL’art de vieの名前は誕生しました。

「テーマパークのようだ、と言ってくださったお客様がいましたが、まさしくそうなんです。滞在中は是非、宝さがしをするように船内を探検してみてください。色々な発見がありますよ」ふふふといたずらっ子のようにさおりさんは笑います。さおりさんもまた宝探しをする乗組員のように、日々航海しているのでしょう。

忘れかけていたものを思い出させてくれるようなワクワクが詰めこまれた空間の中、始まったばかりの航海に胸が高鳴ります。

船員の休憩室のようなベッドルームは4つの2段ベッドで、さながら秘密基地のよう

 

地域と出逢う

前身がレストランだったこともあり、料理も楽しみの一つ。

「手をあまり加えないけれど、手は抜かない。そんなお料理が楽しめます。実は私ももともとこのL’art de vieにお客さんとして、よくレストランを利用していました」なるほど。そこにルーツがあったとは。もともとレストランのファンだった人が働いているとは、食への期待が益々高まるものです。

「レストランの頃から素材のほとんどが地元でとれたものを扱っています。北条の農家さんが育てた無農薬のお野菜や、南予でとれた貝にお肉…。どれも素材そのものが良いので、そのままの味を楽しんでいただけます」

安心して食べられる物ということはもちろん、地元産のものを扱うのは、キャプテンのこだわりだそう。

「今さっき、もいできたよ!」と持ってきてくれる地元野菜は新鮮そのもの

L’art de vie を運営するのは何を隠そう筆者も所属するWEBサイト制作会社です。

レストランをオープンする前から、「出来る限りサイト制作をしてくださったお客様、もしくは地元愛媛のものを取り扱う」というのがキャプテンのポリシー。そうすることで地場産業が活発になり、愛媛の経済が動きます。

「タオルはもちろん今治タオル。スリッパやアメニティなどもそうですね。この色とりどりのソファーの土台は、サイト制作でお客様の元へ訪問した時に、資材として使われていたものを買い取ったものです」手で触れるもののほとんどが、愛媛県で生まれたもので揃えられていました。ドリンクバーでは、愛媛の地酒なども楽しめます。

ソファーのカラフルな土台はコンクリート建設の型枠資材だったもの

愛媛でつくられたもの・使われてきたものが室内にはあふれている

「色々なものが循環し、全てが繋がっていると常々思っています。だからこんな風に愛媛で経営をして何かを還そうとしている理念には、個人的にもリスペクトしています」さおりさんがここで働く選択をしたのは、レストランのファンだったからというだけではなさそうですね。

 

「人」と出逢う

ここまでL’art de vieの魅力を話してくれたさおりさんからは、愛情がたっぷりと感じられました。

「昔からキャプテンに『ここで働きたい!』って話していました。もともと生まれが海に囲まれた場所で、海のそばで働きたいって想いを長年持っていました」しかし、その想いとは裏腹に海とは無縁の場所に住み、無縁の仕事に長年就いていたそう。そんな中、L’art de vieの業態変化、自身もお子さんが独立されるなど人生の分岐点がピタリと重なり、クルー募集の採用情報を見た時には、何も迷うことなく応募したそうです。

「キャプテンの人柄や感性にも惹かれていましたし、未経験の場所で働くことへの不安は全くなかったです」

こうして始まったさおりさんの新たな旅路。新しい発見と挑戦を繰り返しながらホテルオープンに向け準備し、そして先日ホテル第1号のお客様をお迎えしました。

第1号のお客様はご家族3世代、おばあちゃん、お母さん、娘さん女性3人でのご乗船。

当日はあいにくの雨でしたが、唯一無二の空間やこだわりの料理にお三方とても楽しまれている様子だったようです。

接客の中でさおりさんをはじめとするL’art de vieクルーたちとお客様は交流を深め、いつしか人生のお話しをするまでに…。

娘さんはまさに人生の分岐点に立ってる最中。そして、さおりさん自身も分岐点に立ち懸命に進もうとしているところでした。互いの人生を照らし合わせ、気が付くと二人で涙を流しながら話をしたそう。

「お話ししていく中で、娘さんの表情が晴れやかになった姿が忘れられない」とその時のことを思い出しながらさおりさんは話してくれました。

「誰もが人生の中で色々なものを抱えているんですよね。でもそれを否定してはだめ。どんな経験であっても、それが自分を作り上げて進むんです。そんなことを娘さんに話しましたが、自分に言い聞かせていたんですよね」またしてもさおりさんの目には涙が。

こんな風にホテルという場所でお客様と一スタッフが人生の話をする場所が他にあるでしょうか。

お客様が描かれた航海日誌には「また帰ってきます」という文字が…。

旅人が思いをつづる『航海日誌』。訪れた人の人生の旅のかけらに触れる。

 

帰ってくる場所になる

旅先でかけがえのない出逢いがあると、また会いに行きたくなるのが人ではないでしょうか。

それは物であったり景色であったり様々ですが、人だと尚のこと再会は嬉しいものです。

「まだほんの数組ですがお会いしたお客様一組ひとくみ全然違います!空気感、距離感、そしてL’art de vieでの楽しみ方も。これが面白味なんですね。一スタッフとしてこうする、と正しいことを頭で考えるよりも、目の前にいるお客様を大切におもてなしできる方法を行動で表していきたいです」お客様としてではなく、人として向き合ってくれる人がここL’art de vieにはいるのです。

「私自身も、このホテルや人との出逢いで大きく人生が変わりました。人生という旅は本当に巡り合わせですね。これからどんなお客様に出逢えるのか楽しみですし、ご乗船してくださった方がまた帰ってきたい!と思える場所・人になりたい。それが今の私の目標です」海風に吹かれながら話すさおりさんは生き生きとしていました。

昨今、繋がること、出逢うことが減りつつある世の中ですが、出逢いにより育まれるものの大きさに気が付かされた取材でした。

「いつでもお客様のお帰りを待っています」いつだってホッと一息つける温かさが、この船にはあります。

いつまでも愛媛のこの港に停泊しているL’art de vie。

是非、人生という航海の途中に立ち寄ってみては?

 

Open Design

WRITER

Open Design
デザイン会社として、WEB・グラフィック・空間・店舗などのデザインや企画プロデュースをはじめ、アウトドア事業やイベント運営など様々な『ワクワクすること』に取り組んでいます。 私たちの役割は、すべての環境(お客様、社会・地域、スタッフ)を巻き込むこと。 巻き込むものは“ドライブ”がかかって、どんどん良い方向に加速していくのです。「私たちと一緒に本質をつきつめたら、夢や希望が描かれ新しい景色がみえてきた!」と響き合えるように、into the localでもたくさんのステキな出会いをお届けしていきます。